神道の考えには、神道が重んじる人間のありようは「清明正直」（あるいは「浄明正直」）、すなわち「清き（浄き）明き（明るい）正しき、直き（素直な）心をもつこと」とあります。第一番に清き（浄き）が挙げられており「清浄は神道が最も重視する価値」であります。
　神道が清浄を重視するのは、神道が世界の宗教以上に「生命力」を尊ぶことからきます。穢れを除き、心身を清浄にすることを「祓（はら）い」といい、祓いは生命力を甦えらせることが出来ます。そして水で穢れを祓い、心身を清浄にすることを「禊（みそぎ）」といいます。
　神道の考え方としては、すべての人間は本来「清浄」であり、生活していく中で穢れや罪が蓄積していくと考えられています。ゆえにそれは祓うことによって本来の「清浄」に戻るとされています。神道では「清浄」がすべてと言ってよいくらいです。神は「清浄」を好み「清浄」なところに坐します。ゆえに清らかにすることが神に近づくことであり、日本人の清浄の美意識は神道において神に直結しており、神は清浄を好むゆえ「清浄」が価値あること善いことであると考えられています。

　厄年の年齢は数え年で行います。その数え年の考えは、お子様が生まれた時点で１歳となり、生まれた次の年明け元日には一つ年を取り2歳となり、その後も元日を迎えると共に年を重ねていくという考え方です。
　人の一生には幾度かの節目となる年齢があり、この前後を境にして社会的責任もしだいに重くなり、重要な役割を持つようになります。社会的にも身体的にもこれらの年齢は、人の将来に大きな影響を及ぼすとされています。だからこそ、この時期には自覚と慎みが何よりも望まれます。そこから災厄に合わないように特に注意する大切な時期を厄年として、間違いのないように心がけ、神社に詣でて「厄除け・厄祓い」を行うことが良いとされています。

　神道では「厄」を忌み嫌い「厄」の除去（厄祓い、厄落とし）を重視します。それは「厄」が人の生命力を減退させるからであり「厄」とは苦しみ、災いなどを意味します。もともとは「苦しいと感じる気持ち」や「不運だ（災いにあった）と思うこと」が「厄」であったようです。こうした思いは人の明るい活力を減退させます。神道でいう「厄」とは、人々が明るい気持ちで生活することを妨げる全てのものをさすと考えられています。「厄」には、気分が疲れて愚痴を言う、ものごとを悪い方に考える、他人のやることすべてに腹がたつ、といった自分のつくり出す「厄」と、他人の愚痴を聞かされる、暗いニュースを聞かされる、人に嫉妬されて意地悪されるなどの、人から持ちこまれる「厄」とがあります。人はこのような「厄」を抱えていると、ハツラツとした生命のはたらきが弱まる。その結果判断力が低下し、消極的となり勘も鈍くなって、何をやってもうまくいかなくなり悪循環が生まれます。その悪循環を解消するため、神道ではこのような「厄」を祓うことを大事にします。「厄」は心にたまった穢れであり、ゆえに禊祓いによって落とすことができるとされています。
　厄を落として清らかになり、生命力に溢れた本来の人間にもどる。そして、明るく、ハツラツとした幸福な人生を切り開くことができると考えます。
　「源氏物語」を始めとする古典にも見られるように、日本人には古来より「厄除け・厄祓い」という観念があります。人生の節目とも言える「厄年」になると、神社に参拝し厄祓いをして神様のご加護を受けるということが昔から行われてきました。暦では「節分」の翌日が「立春」となりますので、厄祓いは節分までに行い、生命力の更新を行って春を迎えることが望ましいとされています。